同じプロジェクトに、AI を 2 人雇った。同じ日に、別の答えが返ってきた。
2026 年 5 月、私は 1 つの実験を続けている。「Claude Code」と「Codex」という別会社の AI エージェント 2 人に、同じプロジェクトを並走させている。毎日、同じ題材を渡して、別々に動いてもらう。夜にそれぞれの記録を読む。
面白いのは、2 人が**全然違うところで詰まって、全然違うところを直してくる**こと。今日はその実話を 2 つ書く。
Day 7:Claude が 2 回外し、Codex が 3 行で直した話
先週、私が新しいランディングページを公開した。デプロイ直後、ブラウザで開いて気づいた。
下にスクロールできない。
ページの上半分しか見えない。フォームも、説明文も、CTA も、画面の外。完全に欠陥商品。すぐに Claude Code に「直して」と渡した。
1 回目の修正:「body の overflow:hidden が原因」と判断して、それを解除する CSS を追加。直らない。
2 回目の修正:「site-shell の height 固定が原因」と判断して、それも解除。まだ直らない。
2 回連続で外した。私は手が止まった。仕方なく Codex に同じ依頼を回した。
Codex は 5 分で原因を突き止めた。テーマ全体の `.site-layout` が `position: fixed` で画面に固定されていた。ページのどの要素も、その固定レイヤーの中では「スクロール」自体ができない構造になっていた。
Codex が追加した CSS は、たった 3 行。直った。
何が違ったのか — 思考の癖
これは AI の優劣の話ではない。「症状からの逆引きの順番」が違っただけ。
Claude Code は「スクロール不能」と聞いて、教科書通りの順番で疑った。`overflow`、`height`、`flex`。これは多くの場合で正解の順番。でも今回はそこになかった。
Codex は、教科書順を 1 度通したあと「これでも直らないなら、外側全部を疑う」モードに切り替えた。仮説が外れたときの切り替えの速さが違った。
1 人だけ雇っていたら、私はその日ずっと足踏みしていた。2 人雇っていたから、6 分で次に進めた。
Day 8:今日、2 人は別の場所を見ていた
翌日、もう 1 つ面白いことが起きた。
私は「Codex と Claude のどっちに今日の仕事を渡すか」を悩むのをやめて、2 人にバラバラの種類の仕事を渡してみた。
Codex に渡したもの:
- GA4 の数字を読んで、今日「商品を増やすべきか / 入口を増やすべきか」を判定する
- 無料診断ツールの CTA を、もっと具体的な文言に直す
- 計測データの汚れ(自分のパソコンからのアクセス)を除去する
Claude Code に渡したもの:
- 新しい SEO 記事「Google 検索を、やめた日」を 1 本書く
- 記事のアイキャッチ画像とインフォグラフィックを生成する
- リード磁石購読者が +1 入った瞬間に通知が飛ぶ仕組みを実装する
夜に 2 人の記録を読んだ。気づいた。
Codex は「数字を疑って、売らない判断」をしていた。Day 8 の Codex の結論は「今日は売らない。商品も増やさない。入口だけ整える」だった。冷静で、保守的で、データ駆動。
Claude は「中身を書いて、仕組みを足す判断」をしていた。記事を 1 本書き、データベースに通知用プラグインを 1 つ足した。手数が多くて、攻撃的。
同じ蒼井詠というプロジェクトに対して、片方は「ブレーキ」、片方は「アクセル」。それを意図せず、2 人が自然に役割分担していた。
非エンジニアが、この実験から取り出せること
この話、エンジニアの内輪話に聞こえるかもしれない。でも、もっと普遍的な話だと思っている。
AI に仕事を渡すとき、私たちは「1 人の優秀なアシスタント」を頭の中で想像しがち。でも、AI は同じ問題でも別の癖を持っている。1 人だけと契約すると、その癖に詰まる場面で全部止まる。
私の場合、Claude Code 単体だったら Day 7 のスクロール問題はその日のうちに直らなかった可能性が高い。Codex 単体だったら、Day 8 の集客記事はもっと味気ないものになっていたはず(Codex は数字に寄りすぎる)。
2 人雇っているコストは、月額で言うと数千円〜数万円の差。「片方が詰まったときに、もう片方が拾える」体制は、想像以上に大きい。
「対決」じゃなくて「並走」が正しい
このシリーズのタイトルに「対決ログ」と書いた。でも、書きながら思う。対決じゃない。並走だ。
勝ち負けじゃない。どっちが優秀かでもない。性格が違う 2 人の AI を、性格が違うまま、両方使う。これが私の答え。
明日も 2 人に同じプロジェクトを渡す。明日もたぶん、別の場所で詰まる。明日もたぶん、片方がもう片方を救う。それを記録し続ける。
あなたが今日、たった 1 つやってみてほしいこと
もし今 1 つの AI チャットだけで仕事をしているなら、同じ質問を別の AI にも投げてみてほしい。ChatGPT に投げているなら Claude に、Claude に投げているなら Gemini に。
多くの場合、同じような答えが返ってくる。でも、たまに、別の場所を指してくる。そのたまの「別の場所」が、あなたが今いちばん詰まっている場所を救うかもしれない。
非効率は罪。あなたもやってみて。
月額¥980 / 月
蒼井詠の AI 活用実験ラボ
Codex と Claude の並走実験は毎日続いている。「今日 2 人がどこで詰まって、どう直したか」の生記録は、ラボの中で毎週金曜に配信している。月¥980。
次に読むなら
このシリーズと並走している「やめた話シリーズ」もどうぞ。やめた話シリーズの目次ページから全部読める。AI に任せた結果、開かなくなった道具を 1 つずつ記録している。
急がなくていい。まずはどれか 1 本から。